湖面が鏡になる朝がある。 風がなくて、音もなくて、水と空の境界線が消える。 十和田湖に来るたびに、その静けさに少し驚く。 青森の奥地まで来た疲れが、気づけばどこかへいってしまう。 そういう場所だ。
十和田湖のおすすめスポット
十和田湖遊覧船|霧の中、湖はゆっくり動いている
乗船時間は約50分。
料金は大人1,400円。
正直、最初は「ただの船旅でしょ」。
出発してすぐに、考えが変わった。
カルデラ湖特有の深い青が、船の真下まで続いている。
透明度が高くて、底が見えないのに底まで見えそうな、不思議な水の色だ。
秋は両岸の紅葉が湖面に映り込む。
赤と橙と黄色が水の上にも広がって、船の中からため息が出た。
冬季は運休になる。
10月下旬が紅葉のピーク。
その時期に乗れたなら、かなり運がいい。
休屋港から出て、中山半島を回り、また戻ってくるルート。
途中、切り立った岸壁が迫ってくる場面がある。
湖なのに、海みたいに雄大で、少し怖いくらいだ。
奥入瀬渓流|14キロを、ひたすら歩く理由
十和田湖の水が流れ出す場所が、奥入瀬渓流の始まりだ。
子ノ口から焼山まで、全長約14キロ。
全部歩こうとすると4〜5時間かかる。
最初に来たとき、途中で引き返した。
体力より先に、情報量に圧倒されたからだ。
苔が木を包んで、水が岩を削って、光が葉の間から落ちてくる。
同じ渓流なのに、10メートル歩くごとに景色が変わる。
"雲井の滝"や"阿修羅の流れ"といったポイントがあるけど、名前のついていない場所のほうが好きだ。
冬は渓流に氷柱が下がる。
別の場所になる。
夏の緑、秋の紅葉、冬の氷。
三回来て、やっと全部見た気がした。
バスで途中下車して、歩いて次のバスに乗る。
そのつまみ食い方式が、個人的にはおすすめだ。
乙女の像|湖畔に立つ二人は、何を見ているのか
高村光太郎の遺作、と聞いて来た。
実物を前にすると、説明が邪魔に感じた。
像の高さは約2.1メートル。
二人の女性が向かい合い、背中合わせにもなっている、不思議な構図だ。
何度見ても、向き合っているのか、離れようとしているのか、わからない。
湖畔の木立の中に立っている。
観光客は写真を撮って去っていく。
でも5分だけ、像から離れて湖側に立ってほしい。
像越しに十和田湖が見える構図が、ここで一番好きな景色だ。
秋は周囲の木々が色づいて、像が紅葉の中に浮かぶ。
冬は雪をまとう。
どの季節も似合うのに、どの季節も違う表情をしている。
入場料はない。
休屋の観光エリアから歩いて5分ほど。
それだけの距離なのに、急に静かになる。